旅の効用

旅行を好まない人は存在しません。旅行をすることで、新しい文化に触れ、未知の場所を訪れ、自宅の快適さを再確認できるからです。旅行ははるか昔から人間にとって必須のアクティビティだったとも言えます。

旅をしたいという欲求は、人類の進化史で重要な役割を果たしてきたに違いありません。歴史的には新石器時代までの人類はすべて狩猟採集民でした。現在生きているすべての人類の先祖は、自然の中で移動し狩猟を行っていたのです。

人は旅をすることで幸福感を得ます。普段とは異なる空間に身を置くことで、私たちは新しいエネルギーを獲得し、その後の生活や仕事に対するモチベーションを高められるからです。

旅からは新しい情報を得ることができます。人は生きている限り学び続けるものです。未知の事柄についての知識を、旅は与えてくれます。国や人々の歴史や地理、文化について、旅を通して学ぶことが出来るのです。

また、旅は現在持っている知識を試してみる機会であると同時に、新たな言語を学ぶきっかけにもなります。ある外国語が気に入り、その言語を学ぼうという意欲が高まることは素晴らしい変化です。その一方、旅立ちの前に現地で有用な表現を覚えておくといった些細な努力も決して無駄にはなりません。

日常生活からの逃避も旅の一側面です。毎日会う人々や仕事、政治、都市の喧騒、郊外の生活から逃げ出したい気持ちを旅はかなえてくれます。

旅は新鮮な体験に満ちているものです。休暇の目的地が初めて訪れる場所ではなくても、前回とは異なる、新たな体験が待ち構えています。

旅は、私たちの魂を癒し、心と身体の調和を促します。天然のプールで泳ぎ、ゆっくりと自然と融合する時に得られる「平和で静謐な感覚」を形にしたものが、旅なのだと考えても良いかもしれません。

旅は感覚の楽園です。針葉樹の澄み切った香り、イオニア海の美しいビーチの眺め、シチリアの港町の賑やかさと穏やかな波の音、濡れた砂の上を歩く感触…、そして地元料理と伝統的な飲み物が醸し出す完璧な味わい、これらすべての感覚が喜びで満たされる瞬間を楽しめるのが旅なのだとも言えます。

旅はうつ病にも有効です。専門医に相談することがもちろん第一の選択肢ですが、旅もそれに負けず劣らず有効な場合があります。心配事や問題を意識から追い出し、楽しみながら新しいエネルギーを吸収することが、旅では可能なのです。

旅は人を良い方向に変化させます。旅からの帰路は、エネルギーに溢れ、満足し、明るい気持ちになっているものです。必ずしも遠い場所や豪華な所を訪れなくてもいいのです。ほんの短時間でも、住んでいる場所を離れ、自らの環境を変えることに意味があります。旅は、幸せに満足して暮らすことに役立つのです。